ドバイはアラビア半島東部、ペルシア湾に面した砂漠の地にあるアラブ首長国連邦を構成する国の一つ。世界有数の石油資源を持つ地域だが、ドバイは豊富なオイルマネーを元に、早くから石油に依存しない経済発展を押し進めてきた。 今や世界が注目する一大リゾート産業、金融セクターの中心地になりつつある。
ここドバイはほんの数十年前までは、小さな漁村であったが、今では総人口120万人を 超えるメガロポリスに変貌し、世界の建設クレーンの約5割が集結していると言われるほどの怒涛の建設ラッシュで、都市外観は大きく変容している。 非イスラム教徒の外国人が多く住むドバイは、アラブ首長国連邦にありながら、比較的イスラム色や宗教的制約の少ない都市で、住民の実に80%が外国人である。欧米風なリゾート・娯楽施設も数多く存在し、外国人に対して、飲酒、服装、娯楽、豚肉などに関しての制約は比較的ゆるやかである。
急変するドバイ、果たして動物事情はどうであろうか。イスラム圏では、悲しい事に犬は不浄の動物とされており、毛嫌いされているのが現状。 舐められたり、触るだけでもお祓いをする人もいるくらいだ。しかし、ドバイに限れば、あまりオープンにはされていないが、首長が愛犬家で恵まれない犬達の里親活動に積極的に出資したり、世界的なドッグショーが開催されるなど、犬事情も他のイスラム圏とは異なるようだ。近年では外国の影響を受け、犬と暮らす人や施設が増えてきているとは言え、まだまだ少数。ごく限られた例外的な場所を除き、街角で犬を見かける事は皆無である。 
今回は記事作成にあたり、この異文化の中、力強く愛犬と暮らす日本人駐在員ご夫婦からお話を聞く事ができた。イスラム圏は決して犬を飼いやすい環境ではなく、愛犬への負担を考えると、日本に残す事も考えたそうだ。しかし、悩みに悩まれたすえ、「家族が一緒にいられることは大きな喜び」と、ちょっとカールした毛が特徴のシュナウザー犬、"こなつ" をドバイに迎え入れることにした。こうして、柳井さんご夫妻のドバイでの愛犬奮闘記が始まった。
 
ペットを海外に連れ出すことは想像以上に大変だという。海外にペットを送る場合、「その後、日本に連れて帰ることを念頭に置くかどうか」で手順が異る。柳井さんは駐在員、いずれ日本に帰る日がやってくる。再入国させるための手順も、同時に揃えておく必要があり、手続きはかなり複雑で時間のかかるものだった。マイクロチップの装着に始まり、証明書の作成など、やらなければならない事が山積。これは飼主にも愛犬にもかなりの負担となる。手続きの不備などで、税関で係留されている間に亡くなったペット達も多いという。証明書作成にあたっては、所轄官庁に定型フォームや参考例があるわけでもなく、費やしたエネルギーと苦労は、想像を絶するものであったそうだ。
成熟期にある日本のペット市場では、様々なサービスを受けることができるが、こと海外へのペット移送に関しては、仲介業者のレベルは満足いくものではなく、自らの力で情報を収集し、困難と闘いながら準備を進めていったという。しかし、幸いなことに本来「ペット後進国」であるはずのドバイで、信頼出来る業者と巡り会い、そのドバイでの業者と二人三脚で、診断書フォームを日英併記で作成したり、又、親身になって相談にものってくれたことも多かったそうだ。「これら業者の人達は、ドバイ生活には欠かせない良きパートナー。」と柳井さんは語る。 
こうして何とか "こなつ" を無事ドバイに迎え入れる事ができた。すっかり元気で海岸線を走り回る "こなつ" の姿を見て安堵な気持ちがこみ上げてくる、 と同時に「これから先どんなことが起こるのだろう」と不安が頭をよぎる。 イスラム圏で暮らす以上、現地の人には最大限の配慮が必要で、その土地での価値観を尊重することは何よりも大切だ。 
ドバイは砂漠のど真中とは思えない程公園が多く、愛犬を散歩させるには最適の環境にも思えるが、公園やパブリックビーチでの犬はNGだ。何気なく私たちが楽しんでいる行動も、イスラム圏ではそうはいかない。散歩をさせるだけでも一苦労だ。 そんなドバイでも数少ないワンコスポットがある。週末には良く訪れるドバイマリーナ。 ここはご夫婦にとっては憩いの場所。周辺は,外国人が多く居住している関係からかワンコ率が高い。数少ない気兼ねなく犬を散歩できる場所だ。 犬の注意書きの看板を目にしたときは感涙したという。堂々と散歩させてもいいことに感激したのだ。
"こなつ" との生活も慣れてきた頃、またまた試練が。それは住居だ。イスラム圏では犬OKの物件は限られる。以前住んでいた住居も公式にはNG。「見つからないようにする事」を条件に黙認してくれていた。そんなある日、契約更新を済ませた直後、突然「今後はペット一切禁止」の通知が。ペットOKの住居を求めて、奮闘がまたまた始まった。色々と見て廻わる中、やっと犬に良さそうな物件に巡り合う。そう、ここはドバイの中でも犬を飼っているお宅が多く、理想の散歩コースを完備した地域。 日々の散歩道で、なんとも愛らしい子犬達とも出会った。今では日常の楽しみとなっている。これも "こなつ" との生活を通して出会った小さな楽しみ。犬には不思議な力がある。こんな何気ない出来事が、ご夫妻のドバイ生活に潤いを与えてくれているのかも知れない。 
今回の取材を通して、生命あるものと暮らすことの大切を再確認させられた。「家族として迎えいれるということは、その一生を請け負うこと」、こんな当たり前の事が、日常の雑務にかまけて忘れ去られているような気がする。 ただ癒されるからとか、可愛いからだけでは無く、生命有るもの全てを分け隔てなく平等に、受けいれられる社会がくる事を願っている。

また、あのサウナのような暑い暑い夏がやって来る。 
現在は180日の帰国待機中という "こなつ"。
 
頑張れ!  こなつちゃん!!

■写真提供 :・ENJOY! DUBAI LIFE / ・毎日が小夏日和 / ・SKYSCRAPERCITY_DUBAI
■取材協力 :・ENJOY! DUBAI LIFE / ・毎日が小夏日和