インドネシア、ジャワ島のすぐ東側に位置する人口約320万人のバリ島。 神秘に満ちたこの島は、世界中から多くの観光客を引きつけ魅了する、アジア屈指の人気リゾート地だ。現地の人はもとより多くの観光客で賑わうバリ島は、実に国際色豊かで常に活気と刺激に満ち溢れている。
一方、バリ島における犬事情は、これまでは狂犬病予防策の一環として海外からはもとより、インドネシア国内の他地域からの持ち込みまでも禁止するという条例が存在していた。そんな事情もあってか、バリ島固有の犬種は長年純粋さを保ち続けることが出来ていた。
元々バリ島には大きく分けて、バリ犬と呼ばれる短毛の中型犬と、キンタマーニ犬と呼ばれる毛並みの良い長毛の中型犬が存在している。キンタマーニ犬は、そのふさふさした高級感溢れる毛並みと希少価値から、バリ犬よりは高級とされ重宝されている。しかし、条例が改定されてからは、国内外から多くの犬種がこの島に持ち込まれ、バリの犬事情も大きく変化した
 
 
とはいっても、バリの人々の犬に対する接し方は、日本とはかなり異なるようだ。ここでは犬を飼うという感覚は殆んどなく、基本的には戸外で放し飼いするものとされている。首輪をしているわけでもなく、飼い犬か野良犬なのか区別すらつかないケースが多い。
犬達は、昼間は灼熱の太陽を避けるかのように、車が引っ切り無く走る大通りであろうとおかまいなしに、涼を求めて昼寝を決め込む。そして、夕方の涼しくなる頃には活気づき、自由気侭に行動する。 まさに街全体が、自分達の縄張りと言わんばかりに・・・・。
そんなバリ島で「H.I.S.バリフリーク」の編集長として活躍し、バリのコアを鋭くえぐる生きた情報を提供する事で人気の田尾たんぼさんの犬生活を覗いてみた。著書には「バリ島極楽チャンプル」などがあり、文章の端々から犬に対する無償の愛情や、バリ島へのただならぬ思いが伝わってくる。 
そんな田尾さんのバリ生活を華やかに潤してくれるのは、孝行息子でボール遊びが大好きなラブラドール・レトリーバーのMatthew、陽気でゴキゲンな同じくラブラドール・レトリーバーのElza、そしてお転婆なワイヤー・フォックステリアのRunnaだ。 4コマ漫画風に紹介された何気ないワンコとの日常、自分があたかもその場所にいるかのような錯覚さえ覚え、ふっと気がつけばいつの間にか「田尾ワールド」に引き込まれている。
4コマ漫画風に紹介されたバリ島での何気ない日常。 *左がシンクロ。 *右が大好きなボール遊び。
詳細は田尾たんぼさんの愛犬ブログ「もっと バリ島犬まみれ」にて御覧頂けます。 
そんなバリでの楽しい犬生活を一変させる出来事があった。
甘えん坊のフォックステリアのRunnaの事故死だ。突然やってきた我子との別れ。それはとうてい受け入れられる事では無かった…。犬達を家族として迎えることは、彼等の一生に責任を負うという事。だからこそ後悔することをやめ、Runnaの死を素直に受け止めて無事天国に送り出してあげる事が、飼主としての最後の責任だと自分に言い聞かせた。

「それは決してルンナを忘れるということではなく、今の生活を大事にするということだから。だからルンナ、安心して天国で遊びほうけてていいんだよ。そしてまた生まれ変わって、おかあさんのうちのコになってね。おかあさんはルンナにもう一度会える日が楽しみでしかたないんだから。」と田尾さん。
バリ島には田尾さんの犬達のように、飼い主や周りの人達に本当に愛されている犬は、残念ながらあまり多くはないようだ。人間と犬との間には微妙な距離が存在し、犬達は自由気侭に生きていると言えるのかも知れないが、病気や怪我を負った犬たちの多くは、人の力を借りる事なく、自力で強く生き抜いていかなければならない。

このような過酷な環境も、最近では田尾さんを始めとする海外からの愛犬家達が示す愛情と姿勢、そして命あるものと共に生きる責任の大切さが、
ここバリ島においても徐々に目覚め認識されてきつつある。

■写真提供・取材協力 :・もっと バリ島犬まみれ  ・H.I.S.バリフリーク