アメリカ合衆国、誰もが知っている通り北アメリカ大陸の中央部に位置し、本土48州にアラスカとハワイの2州を加えた計50州とコロンビア特別区からなる連邦共和国。今回は、五大湖の一つであるミシガン湖西岸に位置するミルウォーキー市郊外にあるミックス犬メインのレスキュー団体『Heavenly heart Rescue』で活躍中の吉川さんを通して米国の犬事情を覗いてみた。

ミルウォーキー市は、1848年にアメリカ合衆国における30番目の州として承認されたウィスコンシン州最大の都市であり、四季折々の風景が楽しめる自然豊かな都市でもある。そんな自然豊かなミルウオーキーに移り住んだ吉川さんの、犬に対する考え方に変化が見られる様になったのは、人間と犬の絶妙な距離感を感じるようになってからであり、犬が人間社会に自然に溶け込み、共生共存している事に驚きと強い感銘を受けた。
人間であろうと動物であろうと、社会全体が互いを尊重してるかのようであり、動物とバランスのとれた生活を送るには、最適の環境のように思えたという。「日本と比較すると、犬達と一緒に過ごせる環境が整っているように思えます。ドッグランもそうですが、カフェや宿など犬と一緒に過ごせる施設が充実していて、犬と共に生活するにあたっては、さほど不自由を感じる事もなく生活を満喫しています。特に隣町のシカゴは、全米でも犬に対してフレンドリーな都市として有名で、都心一等地にあるホテル等でも犬と宿泊できるケースが多いんですよ。」

日本でも施設の充実化や、犬猫を家族として迎え入れ大切に育てている人は多いが、泊まりがけで出かける場合など、少なからず動物を帯同することによる制約や犠牲を強いられる事はまだまだ多い。しかし、ここアメリカでは動物と暮らすことはごく自然で、本当の意味で人間と動物が共生共存していると感じる事が多く、アメリカでの生活、そして一般市民に根付いているコンパニオンアニマルに関する考えが、後に吉川さんが携わる、不幸な犬猫を救う為の活動に大きく影響したという。
「捨て犬猫、老犬猫、殺処分など犬猫達の置かれた現状は、何とはなく知っていたが、日本にいる頃は、これらについて深く考えた事もなく、自分が直接的なレスキュー活動に参加するとは夢にも思いませんでした。アメリカに移り住んだ頃は、普通に犬を飼おうと思っていたんですよ(笑)。しかし、大家さんからの勧めもあり、地元のPAWSというローカルなレスキュー団体を訪れ、そこではじめて、動物レスキューの存在を知りました。そこには様々な理由から、飼主に見捨てられた可哀想な境遇の犬猫達がいました。そういった境遇の犬猫達を、直接救う事に大きな喜びと魅力を感じて引き受ける事にしたんですよ。」という吉川さんは、ペンシルバニア州でローカルレスキュー団体であるPAWSで2年間、ウィスコンシン州においては、ジャーマンシェパードレスキューという単犬種レスキューで3年間活動した後、現在は地元レスキュー団体であるHeavenly heart Rescueに参加している。米国では施設により受け入れ体制や、里親探しの基準は大きく異なるが、ここでは、ミックス犬を中心に子犬から老犬まで幅広く扱っており、吉川さんは、その中でも特にシニア犬の里親探しに力を入れておられるそうだ。しかし、どの団体にも共通しているのは、捨てられたり虐待を受けた犬猫の保護、去勢、避妊手術の推進、地域への教育、里親探しがメインであるという。
里親探しに関しては、若くて健康な、そして性格や気質が穏やかで、人に懐き易い犬猫達が優先的に貰われてゆくが、不幸にも貰い手のいない犬猫達は、基本期限に達すると殺処分されていくという。一方では直ぐに殺処分するのでは無く、貰い手の少ない犬猫にも再度チャンスを与えようとこれら不幸な犬猫たちを、受け入れている団体も多く存在する。

吉川さんが活動する団体では、その時々の状況により異なるものの、このような境遇の犬猫も積極的に受け入れており、ここではシェルターにではなくフォスターファミリーの元に預けられ、健康状態が悪くても、懐かない犬猫達でも手厚く保護され貰い手を待つという。特にシニア犬は様々なハードルを抱えており、里親として貰い手が付くまでには、かなりの時間を要するのが一般的であるが、実際にシニア犬を里親として貰い受けた人からは、しつけ面や落ち着いていて飼いやすいなどと、シニア犬ならではの魅力も報告されている。

「何よりも長年人間達の身勝手な行動により、不幸な境遇に置かれた彼らに、少しでも幸せな時間を与える事ができ、ともに充実した余生を過ごせる事に、大きな喜びを感じる方が多いようです。」
アメリカでは、不幸な犬猫をこれ以上増やさない為に様々な努力がなされており、不妊去勢の必要や有効性の認識、そして犬猫を新たに迎え入れる場合には、ペットショップ以外にもシェルターやレスキュー団体から譲り受けるなどの考え方がかなり浸透しており、一般市民にも当たり前の事として受け入れられている。実際にペットショップなどで購入するのではなく、ボランティア団体から譲り受ける人も多く、不幸な境遇の犬猫達を、救ってあげたいという精神が広く根付いているという。

しかしながら、動物に対するモラルが高く、設備等が充実しているアメリカでさえも、不幸な犬猫達は多く、特に最近では経済不況のあおりを受けてか、その数は日増しに増えている。シェルターなどで収容されている犬猫の数は、なんと年間600万から800万匹ともいわれ、日本を大きく上回っている。そしてその内の300万から400万匹は引き取り手がなく、やむなく処分されているのが現実だ。
日本であってもアメリカであっても、人間の都合でペット化された犬猫達の置かれた現状には、目を背けたくなる程悲惨な側面が存在する。これをしかたがないと感じるのではなく、現状を直視し、自分たちが今できる事からはじめて欲しいと、吉川さんは広く訴えかけている。犬猫の数が明らかに供給過剰の現状においては、その数を増やすのでは無く、コントロールする必要があり、犬猫を新たに飼うのであればシェルターから譲り受け、避妊手術など最低限できる事は行って欲しいとも語っている。

「第一に、犬を飼おうと思ったらぜひ里親になる選択をしてください!ペットショップには足を運ばずに・・・(笑)ここアメリカでも想像絶する程多くの犬猫達が日々殺処分されています。全てとは言いませんが、ペットショップにいる犬達の中には、パピーミルと呼ばれる悪質な繁殖屋により、生産されるケースも少なくありません。ペットショップで購入すると言う事は、このようなブリーダーを野放しにし、間接的ではあるものの、支持している事にもなりかねません。」

「もう一歩踏み込む事ができれば、ぜひレスキュー活動に参加して欲しいですね。ボランティア活動は日本にいても出来ますし、アメリカの場合では最寄のシェルター、例えば、Humane SocietyやASPCAなどが全米にあり、様々な形のボランティアを常に募集しています。まずは、出来る範囲で自分自身にあった事から初めて欲しいですね。」


■取材協力・写真提供:吉川亜希子。
■ホームページ:King in Milwaukee